「力、残して終わったら、後悔すんぞ!」
消防隊員の訓練中には、先輩隊員から、さまざまな言葉がかけられます。
そのひとつひとつに、いちいち感動し、なんど「そのとおり!」とうなずいたことか。
そのなかでも一番、私の心に刺さったのが、この言葉です。
要救助者を助けるチャンスは、常にいちどきりであるならば、取材のチャンスも、常にいちどきり。
あとで調べればいい。あとで聞けばいい。そんな甘えは許されない。
先輩隊員の言葉は後輩に向けられたものでなく、私にも、つきつけられた気がしました。
そして、いまでもときどき、足が止まりそうになる私の背中を押してくれるのです。
取材は、2012年7月から開始しました。
8月のとんでもなく暑い日に、「訓練開始!」の声とともに階段を駆け上がる、
特別救助隊の背中を追いかけていったら11階建てビルの屋上で、
直射日光と酸欠で吐きそうになりました。
冬のあいだの屋外での訓練のときは、トイレにも行けないうえ寒くて凍えそうになりました。
でも、風邪ひとつひかずに7ヶ月間を過ごせたのは、取材が、本当に楽しくてしかたなかったから。
芝署二部大隊のみなさん、消防学校のみなさんが、
私という「異物」を受け入れ、本音をたくさんみせてくれ、
充実した取材をさせていただけたからにほかなりません。
本当に感謝の思いでいっぱいです。